騎士のすれ違い求婚
✴︎


ジュシアノールが騎士団に戻る日がきた。

彼が兄と城に戻る、その寂しさに、少し拗ねたような気持ちになったティアは、彼の出立の時、わざと禁じられていた庭の奥まで一人で行き、たまたま入り込んでいた野犬に襲われた。

ティアは木の上に逃れ、足下で野犬が引き摺り下ろそうと飛びかかる。

(噛まれるっ! )
と思った瞬間、

別れを言おうと、ティアを探してくれていたジュシアノールが間一髪のところで駆けつけた。

彼は野犬を一瞬で蹴散らせた。

冷静さと気迫と、確かな力強さ。

初めて会った時から、幼心にもときめいた穏やかな彼の、野犬から救ってくれた時見た知らない彼の熱い一面に触れた。
あの時。

「ジュノ様は私のものよ」

とティアは木の上から思わず言った。
ジュシアノールは、

「そうだよ」

と言った。

「離れていても、私のジュノ様なんだから! 」

優しくて、強くて、ティア守ってくれる騎士。

「そうだよ」

と、もう一度、ジュシアノールは答えた。

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