騎士のすれ違い求婚

世界が崩れて行くようだった。

『必ず』

と彼の言いかけたことば、それは、彼の夢を叶えるという言葉だと思った、共に。
あの時。
でも、それは、ティアとではないと言うことか。

まさか妹⋯⋯ として?

そして。

その頃から、ジュシアノールは第二王女への愛情をしめしはじめたのだ、ティアの前で。
ジュシアノールの思い人は、王女だったのだ。
ティアではない。

王女への贈り物が届いた。
ジュノ様から。
花束。
そして髪留め。
その宝飾は、彼の瞳の色だった。

「姫さまは、ちゃんとお読みください! 」

と女官長がいつも強く言うのだが、第二王女は、部屋に届くものはすべて、ご自分でさっさとおとりになる。

つつみなどおかまいなしに。

「まぁ、ジュシアノールったら!
わたくしにですって! 」

と、踊り出さんばかりに喜ぶ。
破られた包み紙とともに、彼の力強い筆跡が見えた。

《愛を込めて》

贈り物だけではない。
忙しく、あまり余裕のないジュシアノールなのに、彼は城にいると、どんな一瞬でも必ず王女の近くを彼は通る。

中庭に出ると、彼は一目でも見るように現れる。

すれ違う一瞬。

ティアは、この2年を、どう過ごしていたのか、あまり覚えていない。

乾いた現実に、ただ生きて動いていた。

切られるように、ジュノ様の、王女への気持ちをまざまざと見せられ、毎回、じっとしながら切られるようなものだ。

< 14 / 30 >

この作品をシェア

pagetop