騎士のすれ違い求婚
世界が崩れて行くようだった。
『必ず』
と彼の言いかけたことば、それは、彼の夢を叶えるという言葉だと思った、共に。
あの時。
でも、それは、ティアとではないと言うことか。
まさか妹⋯⋯ として?
そして。
その頃から、ジュシアノールは第二王女への愛情をしめしはじめたのだ、ティアの前で。
ジュシアノールの思い人は、王女だったのだ。
ティアではない。
王女への贈り物が届いた。
ジュノ様から。
花束。
そして髪留め。
その宝飾は、彼の瞳の色だった。
「姫さまは、ちゃんとお読みください! 」
と女官長がいつも強く言うのだが、第二王女は、部屋に届くものはすべて、ご自分でさっさとおとりになる。
つつみなどおかまいなしに。
「まぁ、ジュシアノールったら!
わたくしにですって! 」
と、踊り出さんばかりに喜ぶ。
破られた包み紙とともに、彼の力強い筆跡が見えた。
《愛を込めて》
贈り物だけではない。
忙しく、あまり余裕のないジュシアノールなのに、彼は城にいると、どんな一瞬でも必ず王女の近くを彼は通る。
中庭に出ると、彼は一目でも見るように現れる。
すれ違う一瞬。
ティアは、この2年を、どう過ごしていたのか、あまり覚えていない。
乾いた現実に、ただ生きて動いていた。
切られるように、ジュノ様の、王女への気持ちをまざまざと見せられ、毎回、じっとしながら切られるようなものだ。