騎士のすれ違い求婚
6 騎士の求婚
✴︎騎士の求婚✴︎



「ティア嬢は? 」

「えっ? ティア? 」

「そうです、彼女は? 」

「さっき体調が悪いと泣き出したから家に返したわ⋯⋯ 」

(⋯⋯ 泣いて⋯⋯ )
と彼は心の中で呟く。

「では失礼いたします」

と急いで踵を返す、心の中ではティアが泣いていたことにもう、上の空だった。

「あらっ、お待ちなさい! 」

王女に引き止められ、ジュシアノールは、正直、急いでいるのにと思う、気が急いて足先は出口を向く。

「ジュシアノール、わたくしに言うことはないの? 」

「は? 失礼いたしました、これにて」

とやはり退出しようとする。

「いえ?
だって、ここまできて⋯⋯ ? 」

「はい、だからティア嬢に会いにきたのですが、帰られたのなら私も追いかけますので」

「はい?
私に用事なのではなくて? 」

「すみません、急いでおりますので、
あぁ、無事に生還いたしました、殿下。
では。失礼いたします」

「あっ⋯⋯ 」

そのままジュシアノールは立ち去った。

「えっ? どういうこと? 」

と王女は目を丸くした。
髪には、彼からの贈り物、彼の瞳の色の宝石をあしらった髪留めまでつけている。
彼のプロポーズを受けるばかりだというのに⋯⋯ 。

「えっ?
どうして? 」

横で、女官長がなんとも言えない顔をしていた。

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