騎士のすれ違い求婚
7 ほどける心
✴︎ほどける心✴︎



何があって、ティアにこんな悲しい事を言わせてしまったのか。
なぜ、王女の話が出てくるのか。
ジュシアノールは、不甲斐なさと不安と。そしてティアと己を分かつ、得体の知れない出来事に憤りを感じた。

つい、声が尖り、怒りが滲む。
いったい何があったのだ。

「もし、王女と俺がなどという話があるなら。完全に誤解だ」

とはっきりジュシアノールは言った。

「あなたの、お父上も何年も前から俺の気持ちを知っておられる。
戦の途中にあなたに見合い話でも持ってこられたら困るからだ。
兄上もご存知だ、というか、騎士団では知らぬ者はいない、国王も! もちろんご存知だ! 」

「そんな⋯⋯ 」

ジュノ様の愛する人は王女ではない?
はっきりと、こんなに強くジュノ様が言っている。
ティアは、何か誤解があったのかもしれないと、その一筋の光に縋るような気持ちがした。

「でも⋯⋯ 」

ジュノ様が王女に贈った髪留めは?
『愛を込めて』と彼の手で記されていた⋯⋯ 。

「姫様は、あなたに愛されていると⋯⋯ 求婚されると⋯⋯ あなたは贈り物もされて⋯⋯ 」

「贈り物など!
した事もないというのに! 」

と強くジュシアノールが否定した。

「でも、姫さまのお部屋に届いていた、あの髪飾りは?
苦しかったのです。
苦しくて、心がちぎれそうで、もう、どうしていいか分からなくて、姫様が羨ましくて⋯⋯ 。
私はこんな気持ちで、あなたが好きです。
こんな意地悪でドロドロな気持ちで、あなたが好きです。
たぶん、この先、あなたが笑いかけた令嬢がいたら、その人も嫌いになってしまう。
そんな心の狭い私なのに、ジェノ様、まだ、あなたを思っていても許されるのですか? 」

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