騎士のすれ違い求婚
「許すも何も」
とジュシアノールは、少し呑まれたように泣きながら告げるティアの告白に言葉を失った。
「⋯⋯ 俺だってあなたがまだ子供の時から、周りを牽制して地固めしてきたのだ。
戦場でも、あなただけだ。
ティアだけが思い浮かんで、あなたを守りたくて俺はがんばれた」
ジュノ様が、と今度はティアも息を呑んだ。
じわり。
彼の気持ちが、体中に染み込みはじめる。
「姫さまに贈り物をされたから。
出陣のとき、忠誠を誓うように、ジュノ様は見上げたから」
「なぜ、王女に?
あれは君への贈り物で、ちゃんとカードもつけていたはずだ」
「えっ⁈ 」
じゃあ。あの花も。
あの髪留めも⋯⋯ 。
《愛を込めて》
王女は、この部屋に届くものは、わたくしのだから、といつも確かめた事がなかった。
そういえば、女官長が、何か言いたそうにしていたっけ⋯⋯ 。
私にだった。
私だけにだった。
彼の瞳の色の髪留めも、
あれは私のだった。
「思わずあなたのいる窓に、心で誓って出陣したのだ。
必ず無事に帰国して、あなたと未来を夢にするのではなく、実現するのだと自分を鼓舞したかった」