騎士のすれ違い求婚
『浅はかで罪のない子供も、時にはその単純さで人を傷つけるのだ』と彼はきつい声で呟いた。
「だいたい、勘違いって、自分の都合の良いようにしか考えられないからおこっている。
あのままだと、困るだろうに。
他国に出たら新たな争いの火種になるかもしれない」
彼のきつい言葉に、憤りに、本当に王女が好みでないとわかった。
嬉しいと思う自分は意地悪だろうか、とティアは思う。
それとも、彼の贈り物を奪われた事を、長きにわたり彼の心を誤解させた事を、このぐらいの意地悪な気持ちで収めるだけですんだといおうか。
いずれにしよ、どんな状況であろうと、どんな邪魔が入ろうとも、負けたくない、誤解などしてはいけなかったのだ。
彼を二度と離したくないと心に誓う。
「そうなのですね。
じゃぁ、あなたが様子を見にこられていたのも⋯⋯ 」
「あなたを一目でも見たくて、偶然通りかかるようにしていたんだ」
「王女に会いにこられているんだと、皆思っていたのです」
「まさか!
思いもしなかった!
ではあなたを傷つけてしまっていたのだな、知らずに、良かれと思って」
それから、
「すれ違ってしまっていたかもしれない」
とジュシアノールが真剣に言った。
「でも、ジュノ様は追ってきて下さった⋯⋯ 」
とティアはつぶやいて、彼に身をよせた。
「あなたが愛おしくて、頭がどうかなりそうだ。
あなたを守りたい、でも愛したい、めちゃくちゃに腕に抱きたい。
愛しい。
あなたの髪も、笑顔も、呼気も。
溌剌とした明るさも。
そして、今知った、俺にむける、熱い気持ち。
嫉妬や、抑えようのない愛情を」