騎士のすれ違い求婚
知っていたはずなのに。
彼の体温も、あたたかさも。
でも長い間、触れ合えなかった。
彼の心が離れてしまっていると思って、彼の体温すら、冷たいものなのではないかといつのまにか思いこんでいたのかもしれない。
彼がティアの手に唇を寄せた。
ジュシアノールは氷のように冷たくもなく、人の温度と柔らかい甘い唇をしていた。
2年前と違って、彼は、唇をティアの素肌に押し当てた。
「皆の前で命じてくださってもよかったのですよ」
「俺はもう嫌なんだ、
自分のことなのに周りに勝手に決められるのは。
自分で決めたい。
あなたが俺を選ぶんだ。
あなたの意志で。
俺だけを。
よくわからない生をうけ、子供の頃から、何を信念に生きて良いのか分からなかった、生きていて良いのかと思った事もある。
でも、あなたがいた。
正直、この国や他の人などどうでもいいと思っている。
ただ、あなたが幸せでいる事を。
過去のあなたへの思いと、これからの変わらぬ愛を誓う。
どうか、俺と結婚してくれないか。
俺と一緒に、初めて手にする我が領地に、来てくれないか。
俺が一生かけて、あなたを守る」
「私もです。
私もジュノ様を幸せにします、
命をかけて、あなたを守ります」
震えながら、しっかりとした決意の込めたティアの声。昨日、今日の気持ちではない。幼い頃から、ただ、彼だけを思ってきた。そんな決意だ。
そのまま、抱き寄せられ、彼の心音を感じた。彼の温もりを感じた。