騎士のすれ違い求婚
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フラフラしながら王宮の門の詰所に行き、体調が悪くなり、実家である公爵家に至急戻りたいと説明する。

すぐに馬車が手配された。

それに乗り込む。

ぼんやり窓の外を見ると、城門が涙でにじむ。
涙は後から後から溢れて、とまらなかった。

(ジュノ様は私の騎士様だったのに⋯⋯ )

馬車はティアの家、公爵家の本邸に向かって走る。

先程の彼の勇姿を、ティアは瞼の裏に思い浮かべた。

立派な騎士になったジュノ様。

彼はやはり透けるような白い肌をしている。
(子供の時とおなじだ)とティアは思った。
それは年月をかけて鍛えても、戦で駆け回っても変わらない、やはり妖精のように美しい肌をしている。

そして目を疑うほどの美丈夫だ。
礼儀正しく、柔らかい物腰、きちんとしていて、清潔。
物静か。

無駄なものがないかんじがする。
身も心も研ぎ澄まされ、積み重ねて彼は彼らしく作りあげられている。
いつでも洗いたてみたいに綺麗で、珍しい白銀の髪は短く整えられ、神のように美しい顔を華やかに見せる。

人々はジュシアノールを氷の騎士と呼んでいる。

彼は大きなサファイヤのような美しい瞳をしている。
ティアが初めて会ったとき、吸い込まれてしまいそうだと思った瞳。
宝石のような、深い森の湖のような、ないだ静かな、底が深い瞳。

彼が王女に贈った髪飾りに、そんな彼の瞳の色の宝飾が施されていた。
ティアは苦しく思い浮かべた。

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