騎士のすれ違い求婚
4 芽生えたはずの愛
✴︎芽生えたはずの愛✴︎



ティアがジュシアノールと初めて出会ったのは、まだ幼い子供の時だった。

ジュシアノールは現国王ではなく、父親にあたる前代の王の腹違いの弟の庶子だった。父親もとうに亡くなり、隔離されるように、人々の好奇の目から隠れひっそりと暮らしていた。
彼はとても微妙な立場に生まれていた。

皆が、腫れ物に触るように彼の様子を伺う。
おしなべて扱いに困ったように、しかしおもねるように。

ちょう現王子が10才になり、将来の臣下候補として、同じ年のティアの兄とジュシアノールが選ばれた。
家柄や年齢も考慮されたが、何より王子がどうしてもと2人を気に入ったからだった。

ジュシアノールは複雑な立場ながら、将来の騎士として歩み始めた。

ティアの父は要職に就く公爵で、頼る家もないジュシアノールを何かと面倒をみていたようだ。

しかし子供にはそんな複雑な事情はわからない。ただ単純に仲が良い。

はじめてジェシアノールが家に来た時。

彼は少し離れたところから、無表情にティアを見ていた。
共に帰ってきた兄が部屋に走り入っても、戸口で遠くを見るように立っていた。
自分がこの空間に入って良いのか、戸惑っていたのだろう。

彼は人形のように整った綺麗な子供だった。
けれど神経質そうに、大きな目ばかりが印象的な、もともと色白の肌をもっと緊張で白くしながら、無口だった。

あまり感情を表さず、何か我慢しているような、押し殺すように耐えて、心がカチカチに固まってしまっているようだった。

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