託宣が下りました。
「信じてくれるの? あの託宣がわたくしの作り物じゃないって」
「お前がそんな卑怯なまねをするわけない。だってお前はばかみたいに真面目じゃないか」

 ソラさんはわたくしの服を掴んで意味もなく揺らします。
 そうして、ふんと鼻を鳴らしました。

「国の連中は託宣を軽んじた。今にきっとしっぺ返しをくらう。これは我の魔の託宣がなくとも分かることだ!」
「……ソラさん、それは誰が言っていたの?」
「親父殿が」

 案外あっさりと白状して、ソラさんはわたくしの胸に飛び込んできました。

「巫女はあったかい。だから信じてやる」
「ソラさん……」

 ……ソラさんは母親を早くに亡くしているのです。甘えん坊なのはそのせいでしょう。
 わたくしも……拒絶する気にはなれません。

 わたくしはソラさんを抱き寄せました。ソラさんの髪の毛が肌に触れ、何だかくすぐったい気持ちになります。

 わたくしの胸元に顔をすりよせ、ソラさんは言いました。

「胸がなくても許してやる。巫女はやわらかいからな!」
「……」

 前言撤回。放り出してもいいですか。
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