託宣が下りました。
カイ様が教えなかったのも、当然といえば当然でしょう。王女様が原因と知ったら、この騎士は何をしでかすのか。王宮に怒鳴り込むくらいはするのでしょうか?
それとも……
(王女様の味方をするの……かも)
半分冗談で思ったとたん、胸の奥が締めつけられるように痛みました。一瞬呼吸を忘れ、それから……はあと大きな息。
「どうした? やっぱり痛むのか?」
「い、いえ。……あの、犯人、あなたも知らないのですね」
わたくしは慌ててごまかしました。
なぜか、彼に本当のことは言いたくないと思いました。
原因が王女様だと知って、結果騎士が怒ったとしても――逆に王女様を擁護したとしても、たぶんわたくしはどちらも喜べない。
何よりそのどちらなのかを知りたくないと心の奥底が叫んでいるのです。
「カイのやつが調べているとか言っていたがな。あいつは慎重すぎてたびたび後手に回るからなあ……俺が調べに出ようか」
騎士がそんなことを言います。わたくしは急いで「駄目ですよ」と言いました。
「カイ様にはカイ様のお考えがあります。邪魔してはいけません」
「しかしなあ」
「駄目です。第一あなたは現場にいなかったじゃないですか」
「む……」
不満そうに騎士は黙り込みました。わたくしはハラハラと騎士の様子を見つめます。
どうか、カイ様の配慮が無駄にならないよう――騎士が、真実を知らないままでありますよう。心の中で星に祈りながら。
ランプの炎がゆらゆらと揺れていました。少し風が出てきたでしょうか。
窓を開けたままではソラさんに迷惑です。それに騎士だって、早く帰ったほうがいい――。わたくしは小さく咳払いをして口を開きました。
「他に、何かご用はおありですか? なければわたくしは眠りたいのですが」
騎士は両手をかけていた太い枝に足まで引っかけていました。
何でしょうか、この姿勢は。そう、いつぞや図鑑で見た、遠い外国にいるという『ナマケモノ』という動物にそっくりなような。あ、単純に猿でもいいです。
やっぱりこの人はどこか動物的ですね。首だけぐりんとこちらに向けられるとなおさらそう。しみじみと実感します。
「巫女。さっきから失礼なことを考えていないか?」
「気のせいですよ、騎士よ」
「そうか? まあいい。それで話なんだが」
それとも……
(王女様の味方をするの……かも)
半分冗談で思ったとたん、胸の奥が締めつけられるように痛みました。一瞬呼吸を忘れ、それから……はあと大きな息。
「どうした? やっぱり痛むのか?」
「い、いえ。……あの、犯人、あなたも知らないのですね」
わたくしは慌ててごまかしました。
なぜか、彼に本当のことは言いたくないと思いました。
原因が王女様だと知って、結果騎士が怒ったとしても――逆に王女様を擁護したとしても、たぶんわたくしはどちらも喜べない。
何よりそのどちらなのかを知りたくないと心の奥底が叫んでいるのです。
「カイのやつが調べているとか言っていたがな。あいつは慎重すぎてたびたび後手に回るからなあ……俺が調べに出ようか」
騎士がそんなことを言います。わたくしは急いで「駄目ですよ」と言いました。
「カイ様にはカイ様のお考えがあります。邪魔してはいけません」
「しかしなあ」
「駄目です。第一あなたは現場にいなかったじゃないですか」
「む……」
不満そうに騎士は黙り込みました。わたくしはハラハラと騎士の様子を見つめます。
どうか、カイ様の配慮が無駄にならないよう――騎士が、真実を知らないままでありますよう。心の中で星に祈りながら。
ランプの炎がゆらゆらと揺れていました。少し風が出てきたでしょうか。
窓を開けたままではソラさんに迷惑です。それに騎士だって、早く帰ったほうがいい――。わたくしは小さく咳払いをして口を開きました。
「他に、何かご用はおありですか? なければわたくしは眠りたいのですが」
騎士は両手をかけていた太い枝に足まで引っかけていました。
何でしょうか、この姿勢は。そう、いつぞや図鑑で見た、遠い外国にいるという『ナマケモノ』という動物にそっくりなような。あ、単純に猿でもいいです。
やっぱりこの人はどこか動物的ですね。首だけぐりんとこちらに向けられるとなおさらそう。しみじみと実感します。
「巫女。さっきから失礼なことを考えていないか?」
「気のせいですよ、騎士よ」
「そうか? まあいい。それで話なんだが」