託宣が下りました。
二人、店の奥の居住スペースに向かう。
店は狭い。魔術具だらけなのは当然としても、あちこちによく分からない置物があって道を狭めているのだ。
(よく見ると各国の置物なんだな。収集癖も相変わらず、か……あれ、なんだ?)
巨大な人型の置物がある。見たことがない衣装を着ているので外国のものだろう。あの大きさだと……ひそかに貴重品なのじゃないだろうか?
そのとき、聞きたくない音がどこからか聞こえてきた。
キーキー、チーチーッ!
「え? ソラちゃんネズミは全部止めたんじゃないの?」
「え……えっと」
ソラが急に汗をかきだした。カイは青くなった。ソラの知らないところでネズミが動いてる――ソラの魔力が暴走した!
「ど、どこだ!? どこにいる!」
「あ――あそこ!」
自分のネズミだけにすぐに見つけ出したソラが、直後悲鳴を上げた。
「あ! それはかじっちゃダメ……!」
(――! あの、貴重そうな置物……!)
ガリガリガリと容赦のない音が耳に届く。
二人で駆け寄ると、一匹ばかりか三匹ものネズミが置物に群がっていた。一度に三匹分の魔力が暴走したとなれば、それはソラの魔力が成長したということなのだが、今は喜んでいる場合じゃない。
カイはすぐに空中に魔法陣を描き、ソラの魔力を断ち切った。
しかし、ソラのネズミのかじる力は半端ではない。わずかの間に、置物の底はぼろぼろになっていた。
「あ――」
ソラががくんと床に座り込んだ。「ど、どうしよう……親父殿が、親父殿が怒るよ」
「……お父さん、怒ると恐かったっけ?」
「じ、実験体にされちゃう……!」
「……」
アレクサンドルの一見優しげな笑みを思い出し、カイは思う。あの顔に何人の魔術師仲間がだまされたことか。
一番恐いのは怒る人間ではない。笑いながらとんでもないことをする人間なのだ。
だから――
カイはおもむろに空中に魔法陣を描き、そして。
ネズミにかじられた底の部分を、破壊した。
「カイ!?」
「――これで、犯人は僕になる。大丈夫だよ」
ため息まじりにそう言い、ソラに笑いかける。できるだけ目を隠すようにしている前髪のせいで、あまり見えないだろうけれど。
「カ、カイ、でも親父殿には分かる」
「大丈夫。僕だって術には自信があるんだ――君の魔力は消しておく。大丈夫」
店は狭い。魔術具だらけなのは当然としても、あちこちによく分からない置物があって道を狭めているのだ。
(よく見ると各国の置物なんだな。収集癖も相変わらず、か……あれ、なんだ?)
巨大な人型の置物がある。見たことがない衣装を着ているので外国のものだろう。あの大きさだと……ひそかに貴重品なのじゃないだろうか?
そのとき、聞きたくない音がどこからか聞こえてきた。
キーキー、チーチーッ!
「え? ソラちゃんネズミは全部止めたんじゃないの?」
「え……えっと」
ソラが急に汗をかきだした。カイは青くなった。ソラの知らないところでネズミが動いてる――ソラの魔力が暴走した!
「ど、どこだ!? どこにいる!」
「あ――あそこ!」
自分のネズミだけにすぐに見つけ出したソラが、直後悲鳴を上げた。
「あ! それはかじっちゃダメ……!」
(――! あの、貴重そうな置物……!)
ガリガリガリと容赦のない音が耳に届く。
二人で駆け寄ると、一匹ばかりか三匹ものネズミが置物に群がっていた。一度に三匹分の魔力が暴走したとなれば、それはソラの魔力が成長したということなのだが、今は喜んでいる場合じゃない。
カイはすぐに空中に魔法陣を描き、ソラの魔力を断ち切った。
しかし、ソラのネズミのかじる力は半端ではない。わずかの間に、置物の底はぼろぼろになっていた。
「あ――」
ソラががくんと床に座り込んだ。「ど、どうしよう……親父殿が、親父殿が怒るよ」
「……お父さん、怒ると恐かったっけ?」
「じ、実験体にされちゃう……!」
「……」
アレクサンドルの一見優しげな笑みを思い出し、カイは思う。あの顔に何人の魔術師仲間がだまされたことか。
一番恐いのは怒る人間ではない。笑いながらとんでもないことをする人間なのだ。
だから――
カイはおもむろに空中に魔法陣を描き、そして。
ネズミにかじられた底の部分を、破壊した。
「カイ!?」
「――これで、犯人は僕になる。大丈夫だよ」
ため息まじりにそう言い、ソラに笑いかける。できるだけ目を隠すようにしている前髪のせいで、あまり見えないだろうけれど。
「カ、カイ、でも親父殿には分かる」
「大丈夫。僕だって術には自信があるんだ――君の魔力は消しておく。大丈夫」