託宣が下りました。
 と言っても、この店で突然カイが魔術を使う不自然さはある。

(ソラちゃんに魔術を教えていたとでも言おうか)

 カイがあれこれと考えを巡らせていると、

「カイ!」

 ソラが突然抱きついてきた。

「ソ、ソラちゃん!?」

 カイは目を白黒させた。小さな体は、小柄なはずのカイの腕の中にもすっぽり収まってしまう。
 頼りないのに活力にあふれた体。熱。存在感。

「カイ、お前いい男だったんだな。知らなかった」
「そ、そう? ありがと――」
「そうだ! カイがモテないなら私がカイのお嫁さんになってやる! どうだ?」
「――!?」

 ソラが嫁。ネズミの大群遣いのソラが。ことあるごとにネズミをけしかけられる生活。さらに今後は人形が成長する可能性もある。

 そして何より父はアレクサンドルで兄がヴァイスで――

 え、そんな生活、冗談でしょう?

「無理!」

 カイは声を上げた。正直すぎるほどの本音をそのままに。

 それはつまり、小さなソラの求婚を真面目に――そう、現実的に――考えてしまった結果、だったのだが――

 ソラの顔色がみるみる変わっていくのを見て、カイは失言を悟った。しまった、もっとマシな言い方もあっただろうに。

 何より――どうやらソラは真剣に求婚していたらしい。そのことに、カイは幸か不幸か気づいてしまったのだ――。
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