託宣が下りました。



「カイなんか嫌いだ。未来の可能性を見ようとしない」

 ぷん、と顔をそらしながら十歳となったソラは言う。十歳のくせに大人びたことを。

 同じ馬車に揺られるアルテナが、くすくす笑いながらカイを見る。

「カイ様、きっと後悔なさいますよ?」

 ……それをあなたが言うんですか、お姉さん。カイは心の中で小さくつぶやく。

 分かってる。ソラがいまだに自分を好きでいてくれていることくらい。

 ソラが将来どんな人に――どんな女性になるのか、気にならないわけじゃない(被害は最小限に抑えたいので)。

 でも。

 ――後悔、する気がする。そっぽを向いたままのソラの横顔をひそかに見つめて、カイは思う。

 こんなに生き生きとした子なら、きっと未来も活力にあふれた美しい人になるのだろう。自分にとって一番苦手な――。

 一番、目を奪われずにはいられない、人に。

 そのとき自分は、ソラをまっすぐ見られるのだろうか。

(……いいんだ。ソラちゃんにはもっといい人が見つかるよ)

「カイ! さっきからなに人をじろじろ見ている!」
「うわああななな何でもないっ」
「カイ様、女の子をじろじろ見てはいけませんよ」
「おおお姉さん分かってて言ってるでしょう!」

 ――馬車は平和に道を進んでいく。どうか未来も、このまま平和で……



(カイとソラのカンケイ/終わり)
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