託宣が下りました。
星の……神。
我が国エバーストーンを守護する、無数の星々。
他国では、神には名前があることがほとんどのようです。ですが我らが星の神には名がありません。というのも、ひとつの確立した存在ではないからです。
しいて言えば、「あの無数の星ひとつひとつすべてが」神。
わたくしたちは――修道女だけではなく一般人を含め――日頃、ことあるごとに星に祈ります。すべての星に祈る人もいれば、たったひとつの星を決め、それに向けて祈る者もいます。
星によって、聞いてくれる願いが違うとも言われます。そのため本当ならば「星の神々」と呼ぶべきなのかもしれません。その辺りの解釈は人によります。修道院では今のところ「すべてを含めて星の神」と呼ぶことで落ち着いていますが、今後の成り行きしだいでは変化していくのかもしれません。
星の託宣を下すのは――どれか決まった星ではないのです。
逆に、星全体の声というわけでもありません。
例えばわたくしが聞いた星の声と、シェーラが聞いた星の声は、同じものとは限らない。と言ってもたしかめるすべはありませんが、修道院では星の声はそういうものだと了解されてきました。
そんな摩訶不思議な存在ですが、神託は違ったことがないのです。いつだって、我々エバーストーンの民のためになる託宣でした。
その星の神が魔王の降臨を告げられた。降臨さえ分かっていれば、対処できるかもしれない――。
この国はまだ神に見捨てられていない。わたくしは、そう信じたい。
「私たちも気合いを入れ直さなくてはならないな。カイ、少し修業に出ようか」
「そうですね……」
「修業?」
わたくしは驚いて目の前の二人を見つめました。「修業って、どのような?」
「簡単に言えば魔物討伐の旅です。王都に戻らず、出っぱなしで戦います。魔物が凶暴化している地域に率先して出向く。短期間で力をつけるにはそれが一番ですから」
「王都に戻らず――」
言葉を失いました。
アレス様は簡単に言いますが、過酷なのは想像がつきます。
いつも優しい二人がそんな渦中に身をなげうつだけでも胃が引き絞られるように痛むのに、まして――
……騎士も、当然一緒に行ってしまうのでしょうから。
アレス様が、わたくしの顔色を案じたように微笑みました。
「大丈夫ですよアルテナ。私たちはそれに慣れていますから」
「………」