託宣が下りました。
「その通り!」
バタン! 突然ドアが派手な音を立てて開きました。
ソファの上で飛び上がるほど驚いたわたくしの目に映ったのは、ずかずか入ってくる騎士ヴァイスの姿――。
目が合うと、嬉しそうに笑う騎士。わたくしは顔をそむけました。恥ずかしすぎて顔を見られません。ああ本当に、先刻は何て破廉恥なことをしてしまったのでしょう。
でも、なかったことにはもうできません。この気持ちを消せないのと同じで。
「……ヴァイス。もう少し静かに入ってこられないのか」
「こうしたほうが印象的な登場になるだろう?」
「心配するな誰もお前のことなんか印象に残したくない。で、用事は済んだのか?」
「おお。万事順調だぞ」
そう言って、騎士は誰に許可を取るでもなくわたくしの隣にどっかと座りました。わたくしは心臓が飛び出るかと思いました。お尻の位置がむずむず落ち着かなくなって、途方に暮れてしまいます。
そんなわたくしの気持ちなど気づくわけもなく、騎士は意気揚々と口を開きました。
「王都から出てきている情報屋から話を買ってきた。今王都はお祭り騒ぎだそうだ。シェーラ殿も担ぎ出されて、迷惑しているらしい」
「お祭り騒ぎ……? それじゃあまるで喜んでいるみたいじゃないか」
「あながち間違っとらん。祭りは今回の託宣を『よいもの』として喧伝している。特に王宮の監査室長エヴァレット卿が民衆を煽っているらしい。星の神への信仰心を失うな、そうすれば必ず魔王は倒される、とな」
「……それはそれは」
アレス様が苦笑します。たしかに、民衆の信仰に関わらず魔王と戦うのは彼らのようなハンターなのですから、皮肉な気持ちにもなるでしょう。
「エヴァレット卿……ですか。修道院を取り締まる役目の宮廷監査室が、突然どうしたんでしょう」
カイ様がぼそりとつぶやきました。彼は宮廷に詳しいはずですが、ここしばらく王都に帰っていないので、戸惑っているようです。
「心当たりはないのか? カイ」
「……心当たりと言っても……。たしかにエヴァレット卿は監査室長の立場でありながら、修道院とは非常に懇意にしています。星の神信仰についても肯定的です。彼自身が信じているかどうかは別ですが」