託宣が下りました。
でも、と彼は言葉を選ぶように慎重な声音で続けました。
「こんなときに突然星の神をあがめろ、なんて言い出す人ではありません。たぶん……違う力が動いたんじゃないでしょうか?」
「……王宮か?」
「たぶん」
「具体的に誰だ? ヴァイス、それは分からなかったのか?」
「今調べさせている」
騎士はすっと目を細めました。こんな顔をすると、彼もずいぶんまともに見えます。
み、見とれてなんていませんよ! 今は大切な話をしているんですから!
「まあどうせ王族の気まぐれだろう。あいつら気まぐれが服着て歩いているような連中だからな。それに」
「それに?」
「巫女の託宣を否定したことで反発もくらってる。それで落ちた王室の支持率を何とか持ち上げたいんじゃないか」
え、とわたくしは騎士を見つめました。
「反発……? 反発などあったのですか?」
「そりゃあある。星の託宣は聖なるものだからな。どんな内容であっても絶対だ、それを星に守護されている王宮風情が却下するとは何事だと騒いだ一派もいるし、ひそかにそう思っている一般の連中もかなりいる」
加えて、と騎士は急にわたくしを見て微笑みました。
「そのときの巫女が勤勉実直だという評判も流れていたからな。託宣を利用して自分をどうこうしようとする人間ではないと」
「―――!」
わたくしは声を失いました。
そんな。そんな風に言ってくれる人たちがいたなんて。