託宣が下りました。
「ヒューイに作ってもらってだな、さらに魔術を施す。この世にひとつきりの最高の腹巻きだ。どうだ?」
「頭に蛆虫湧いてんのかてめえは」
すかさずヒューイの毒が飛ぶ。「違うさヒューイ」とアレスが重ねる。
「ヴァイスは脳がチーズのように発酵しているんだ」
それを聞いたカイは、ついぽつりとつぶやいてしまう。
「……チーズだったら栄養満点になっちゃう……」
「うむ。今日もひどいなお前ら」
ヴァイスは平気な顔だ。というのも、これが彼らの日常だからである。
ヴァイスの幼なじみであり、普段は温厚篤実なのにヴァイスにだけは辛辣な勇者アレス。
人より理性的だと自認しているものの、仲間にはつられがちな魔術師カイ。
そして最初から毒を隠す気などかけらもない、罠解除師ヒューイ……
こんな仲間に囲まれていながら、ダメージを受けることのない文字通りの“盾役”ヴァイスであるが、それにしても頑丈すぎるように思う。彼の堅さはいったいどこから来るのか、カイは時々研究したい衝動に駆られる。
「腹巻きはよせよヴァイス。もうちょっといい贈り物くらいあるだろう。王都の名物とか、紙とか貴重なものを」
アレスが当然の提案をした。
しかしヴァイスは「いや」と首を横に振る。