託宣が下りました。

「一晩よく考えた末の結論だ」
「お前の頭はどうなってるんだ」
「では腹巻きの何が悪い?」

 逆に問い返され、カイたちは一様に黙り込んだ。……何が悪い、と言われると……

 まあ、役には立つだろう。相手の体型を知らなくてもある程度なんとかなる。特にそろそろ寒さも身にしみ始める時期だ。親しい人間に贈るのなら、まあ、悪くないかもしれない。

 しかし、ヴァイスは巫女の父親と親しくなんかない。会ったこともないはずだった。

(怖いのはヴァイス本人は近しい人間のつもりでいるかもしれないってことなんだよね……)

 巫女アルテナと結婚する気でいるヴァイスにしてみれば、巫女の父親も家族同然なのかもしれない。
 その勘違いがどんな問題を起こすかと思うと、カイはアルテナに深く同情してしまう。

「巫女のお父上には健康でいていただきたいものだからな。腹巻きは健康器具だ」

 いや健康器具ってほどのものでも。体にはいいだろうけども。

「……すっかりふぬけやがって」

 ヒューイはうなるようにそう言った。「女、女、女。てめえ、そんなんでやっていけんのか?」

「やっていけてるじゃないか。何が問題なんだ?」
「ふざけんな魔物討伐をさぼりまくりやがって。こっちがどれだけ迷惑しているか――」

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