託宣が下りました。

 と、ヒューイに顔を向ける。ヒューイが苦々しい顔をした。

「そこらへんの出来合いのもんでも使えよ。何で俺が」
「何を言っている? 俺はヒューイ以上に裁縫のうまい人間を知らん!」

 ヴァイスが声を張った。とたんにヒューイの手元から酒の入ったグラスが飛んだ。

 ヴァイスがひょいと避けたものだから、グラスはその向こうにいる他の客にぶつかり、中身の酒をぶちまけて大騒ぎになる。アレスが慌ててヴァイスを引っ張って謝りに行き――ちなみにヒューイを連れて行くと悪化するので連れてはいかない――客も勇者一行と分かったとたん寛容になる。一連の出来事を隅っこの席で眺めて、カイはほっと息をついた。

「で、ヒューイ。作ってくれるんだな?」

 戻ってきたヴァイスは開口一番そう言う。

「しつけえ……」

 ヒューイは獣のようなうなり声を上げて、……しかし、直後に不敵に唇の端をつり上げた。

「いいだろう。作ってやらあ、最高の腹巻きを」
「ヒューイ……?」

 カイは訝しく思って前髪の間からヒューイを見る。
 ヒューイは腰に片手を当てた。

「ただし条件がある。俺が作ったことを必ず相手に伝えろ、いいな」
「構わんが、なぜだ?」
「ふん」

 ヒューイは険悪な笑みを浮かべ――、

「男が作った腹巻きを男から贈られた町長とやらの反応を知りてえだけだ」
「………」

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