託宣が下りました。
第七話 もう、迷いません。
「王宮に許可なく侵入した、とのことです」
ウォルダートさんは淡々とそう述べました。「王宮の裏庭にいるところを、見回りの兵士が見つけたそうで」
「嘘!」
いつになく荒ぶった声が、わたくしの喉からはじき出されました。
ラケシスが、妹が王宮に侵入した? そんなはずは!
「お、王宮になど用はないはずです……! おまけに無断侵入だなんて!」
「落ち着け巫女。まだきっと我々の知らないことがある」
騎士の大きな手がわたくしの背中をぽんぽんと叩きます。
そのリズムがわたくしに冷静さを取り戻すチャンスをくれました。わたくしは大きく深呼吸をして、動揺を抑える努力をしました。
騎士の言う通り、知らないことがまだたくさんある。
院長先生のはからいで、今この孤児院の玄関にはわたくしたち三人しかいません。マリアンヌさんは昨日のうちに帰り、わたくしは今日、騎士につれられてこの孤児院を離れるはずでした。
騎士のお屋敷に戻るつもりだったのですが……、ウォルダートさんはそれを待たずに報告に来てくれたのです。
「未明の出来事と聞いております。サンミリオン町長殿のところにも、すでに知らせが走っているでしょう」