託宣が下りました。
騎士は腰に手を当てました。心底不満げな顔でした。「本当に、王族はいつも勝手でいかん」
「だが、魔王討伐は早く成さねばならん。当然のことであろうが!」
エヴァレット卿が反論します。丸い顔を真っ赤に染めて、彼なりの本気がうかがえます。
騎士は耳をほじってその意見を無視しました。そして、
「そんなわけで、修道院にエヴァレット卿を連れて行った。巫女の託宣の取り消しの取り消しのために」
「は……」
「修道院の上層部にな、託宣を再度認めるから、巫女を――アルテナ・リリーフォンスを修道院で受け入れるようにと言いにいったんだ。そうすれば最低でも修道院からのラケシス殿の擁護は可能になる。昔から王家の結婚は修道院の許可がなくては決まらん。そうだろう?」
そうなのです。王家の結婚は『神のお許しがなければ』許されないのが建前。
そのため修道院は、すっかり形骸化しているその様式によって、王家の結婚には必ず関わることになっているのでした。それで――。
「で、でも! 託宣の取り消しの取り消しだなんて、そう簡単にできるわけが」
「それができたんだなあ。何せ最初の取り消し自体が『簡単』だったろう? あの託宣を不都合と考える者がいなくなればいい。幸い王宮には弱みを持つ人間が山ほどいる」