託宣が下りました。
騎士はしみじみと、「こんなときのために手を回してあって良かった……」と独りごちました。
「王妃殿下以外は何とか手を打ったぞ。あとはエヴァレット卿さえ動けば良かった。まあそんなわけで、卿には他の連中よりも深く弱みをえぐらせてもらったが」
「言うな! 黙れ! この卑怯者が……!」
エヴァレット卿はぴょんぴょん飛び跳ねながら抗議します。両腕を振り回し、失礼ながら動きが何かの動物のよう。
「うふふ、ヴァイス兄ったら人の弱みを見つける天才」
「あらあら、ヴァイス兄のしわざだけでもないんでしょう?」
「その通りカイにも協力させた。言っとくがああいった後ろ暗い情報はカイのほうがよっぽど得意だぞ」
……人間恐怖症が極まって人から隠れて行動しがちなカイ様は、王宮の暗部に触れやすいのだということを今さら思い知らされます。
カイ様本当に、それって本末転倒です。
「ロックハートのやつめこの先見ていろ!」
卿が空に向かって吠えているのを、騎士はのんびりと眺めています。
「弱みを作るほうが悪いのさ、馬鹿だなあ」
「うふふ。ヴァイス兄に馬鹿と言われるなんて」
「うふふ。最大の屈辱ね」
「では、本当に……本当に託宣は認められるのですか?」
にわかには信じられませんでした。