託宣が下りました。

 あんなに取り調べられて、あんなに抵抗したのに聞いてもらえなかった……それなのに、こんなあっさりと。

 騎士はうなずきました。

「ああ。だから」

 すっとその手がわたくしの肩に伸びます。
 ぽんと触れる直前、なぜか指先が震えたように見えました。

「――俺が出立したあと、修道院にも堂々と戻れるぞ、巫女」

 彼はそう言って、少し寂しげに微笑みました。



「国民にとって、託宣とは奇妙な存在なのです、アルテナ」

 そう言って、修道長アンナ様は淡く苦笑しました。「実のところ託宣のその後をいちいち確認している者はごくわずか。大半の者は、託宣が実現したかどうかを知らずに過ごしているのですから」

 あのあと、中央広場でエヴァレット卿と別れることになり――
 わたくしたちは一度騎士の実家『羽根のない鳥亭』へと帰りました。

 モラさんが「待ちくたびれたよ!」と憤然と出迎えてくれました。思ったよりも時間が流れていたようです。姫と相対していた時間は、あっという間のような気がしていたのですが。

 ソラさんも目覚めていて、わたくしを見るなり「巫女!」と抱きついてきました。
 そしてみんなでお昼ご飯をともにし――
 午後もやっぱりソラさんの相手で時間を取られ、やがて夕刻。

『巫女。修道長に会いにいかないか』

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