託宣が下りました。
あんなに取り調べられて、あんなに抵抗したのに聞いてもらえなかった……それなのに、こんなあっさりと。
騎士はうなずきました。
「ああ。だから」
すっとその手がわたくしの肩に伸びます。
ぽんと触れる直前、なぜか指先が震えたように見えました。
「――俺が出立したあと、修道院にも堂々と戻れるぞ、巫女」
彼はそう言って、少し寂しげに微笑みました。
*
「国民にとって、託宣とは奇妙な存在なのです、アルテナ」
そう言って、修道長アンナ様は淡く苦笑しました。「実のところ託宣のその後をいちいち確認している者はごくわずか。大半の者は、託宣が実現したかどうかを知らずに過ごしているのですから」
あのあと、中央広場でエヴァレット卿と別れることになり――
わたくしたちは一度騎士の実家『羽根のない鳥亭』へと帰りました。
モラさんが「待ちくたびれたよ!」と憤然と出迎えてくれました。思ったよりも時間が流れていたようです。姫と相対していた時間は、あっという間のような気がしていたのですが。
ソラさんも目覚めていて、わたくしを見るなり「巫女!」と抱きついてきました。
そしてみんなでお昼ご飯をともにし――
午後もやっぱりソラさんの相手で時間を取られ、やがて夕刻。
『巫女。修道長に会いにいかないか』