託宣が下りました。
じろりとにらみつけると、騎士はぶんぶん首を振り、
「とんでもない今日が初めてだ。その、何か出立に持って行けるものがあればなあと」
「……」
わたくしは小さくため息をつきました。「それならば、わたくし本人に頼んでください」
「え? くれるのか?」
彼は本気で驚いたようです。まったくもう……彼の中でわたくしはどれほどけちな女なのでしょう?
(いえ……違うわ)
彼はまだ分かっていないだけ。わたくしがどれほど彼を想うようになったか知らないだけ。
それを教えていないのは、他ならぬわたくし自身なのだから。
「帰りましょう」
わたくしは微笑みました。そう、帰りましょう。彼の――家へ。
少し歩こうと彼は言いました。わたくしもそれに賛成しました。
心地よい夕刻です。鮮烈な色に染まった夕日を浴びながら歩くと、何だか力をもらえるよう。
「ラケシスは家に帰れるのでしょうか?」
帰る道行き、騎士にそう尋ねると、
「いや。しばらく城に留め置かれるようだぞ」
騎士は首を振りました。「何せ解決しなくてはならんことが山積みだ。もう暗殺者扱いではないが、簡単には解放できん」
「……王太子殿下は、ラケシスを守ってくれるでしょうか」