託宣が下りました。
ラケシス自身いわく、情けなく気の弱い王子様。姫様いわく、部屋に閉じこもってしまうような人。
騎士が怒鳴り込んでいかなければそもそも部屋から出てきたかどうか、それさえも定かではないのです。それを思うと、妹の身を預けることに不安があるのですが……
騎士はあっけらかんと、
「まあ大丈夫だろう。何かあったら俺が脅しておいた王宮の連中も動くだろうし」
「お、脅したんですか」
「そう言ったろう? そもそも昨日はほとんどその手配で――おっと」
今さら口を覆っても意味はありませんよ、騎士よ。
わたくしは呆れ果てて、「ほどほどにしてくださいね」と言っておきました。
もっとも――そんな強硬手段でもとらなければ、一般人であるわたくしたちは王宮を相手に戦えないのかもしれません。
わたくしは行く先を見つめて目を細めました。
町をそろそろ外れ、人通りもなくなりつつあります。足を向けるのは、ちょうど夕焼けの広がる方角。
騎士の瞳のような色の空。
「魔王討伐の出立のご予定は――」
「うん。いや」
彼は言葉をにごしました。「……まだ分からん。仲間たちには伝達しておいたが……まあ簡単にまとまる話でもない」
嘘だとすぐに分かりました。たぶん旅に出ることに、やぶさかなお仲間はいないのでしょう。
彼は、間もなく行ってしまうのです。