託宣が下りました。
(……それでも)
「わたくしは、騎士のお屋敷を守っていればよいのでしょうか?」
努めて明るく話したつもりでした。
しかし彼は、ぴたりと足をとめました。
返ってきた声は、思った以上に――真剣で。
「……待っていなくてもいい。修道院に帰っていいんだ、巫女」
「………」
数歩先に進んでしまったわたくしは、同じように足をとめて振り向きました。
彼はわたくしをじっと見つめていました。
「……託宣をもう一度王宮に認めさせることは、本当はもっと前にできた。だが俺はしなかった――巫女が修道院にいられなくなるほうがいいと思っていた。俺は、卑怯だ」
夕焼けから目をそらしたのに、やっぱり見えるのは夕日の色。力強くあざやかな、生命の色。
「――でももうやめた。直接あなたを守ることが許されないなら、せめて好きな場所にいてほしい」
好きな場所に――帰っていいと。
生気に満ちあふれているはずの瞳が、どこか頼りなげに輝いていました。
わたくしは――
ただ、笑って。
「嫌です、ヴァイス様。わたくしはあなたを待つことに決めたんです」
「巫女――」
「名前で呼んでください」
「……アルテナ」