託宣が下りました。
夕刻に世界を包む太陽の色。それに魅入られたわたくしは、もう逃げることなどできない。
「わたくしは本当に取り柄のない女です。それでも……許してくださるんですね?」
じっと夕日の色の瞳を見つめると、その色もわたくしをまっすぐに捕らえて動かずに。
「取り柄がないどころじゃない。俺にはあなたしかいないんだ、アルテナ」
どうして……?
何度も何度も思った問い。その答を知る日も、いつかくるのでしょうか?
(でももう、理由なんていい)
わたくしが騎士を愛した理由も、今となってはどうでもいいのと同じように。
騎士は大股にわたくしに近づきました。両腕に抱きすくめられて、わたくしは強く胸をときめかせました。そう――
この心に素直になれば、いいだけ。
「俺の妻になってくれ、アルテナ。必ず生きて戻ってくるから」
「……約束ですよ、ヴァイス様。わたくしを未亡人にしないで」
約束する、と――
応える声が、泣きそうに震えていました。
抱きしめた腕をほどき、両手でわたくしの顔を包み、彼は口づけを落としました。
「……本当に」
信じられないとその声の響きが訴えています。
今こそ、言うとき。ずっとごまかしてきた気持ちを償うために。
「あなたを愛しています。もう、迷いません――どうかわたくしをさらっていって」