託宣が下りました。

「それは心外でございます。ところで旦那様、われわれ使用人一同寝所を別所へと移したいのですが、よろしいですか」
「駄目だ! お前らも一緒に埋まれ! あああもう!」

 せっかくの夜が台無しだ! ――叫ぶ騎士の声は大量の動物たちの鳴き声に決して負けていません。
 かくして、甘いはずだった夜の夢は一瞬にして破れ去ったのです――。



 あのあと、アンナ様にひそかに聞きました。

『星の巫女は神の実験のためにあったと聞きました。本当ですか?』

 どうしてもそれが聞きたかった。わたくしの知らないことを埋めたかったのです。
 アンナ様は顔を曇らせました。

『……そのように言う者もおりますが』

 お言葉をにごして、それだけ。結局分からずじまいで。
 ラケシスのこともまだ不安です。何より魔王が復活する。未来が明るいとは、お世辞にも言えません。

 でも――。

(騎士と生きる道の模索。知らないことを知ること。知っていることを愛すること)

 未来は自力で勝ち取りなさいと、クラリスさんは言いました。
 今なら、分かります。どんな未来を迎えるかはわたくし次第。

(きっと後悔はしないように)

 騎士と歩む道にもう惑いなどないように。今、心から。

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