託宣が下りました。
最終章
第一部 貴方に、
「では、行ってくる。――今日も気をつけるんだぞ、アルテナ」
そう言って騎士ヴァイスはわたくしを抱き寄せ、額に口づけを落とします。
「はい、いってらっしゃいませ。アレス様たちによろしくお伝えください」
わたくしは少し照れながら彼の腕の中で言いました。
――彼の家で過ごすようになって早二週間。彼は出かけるたびにこの調子ですが、いまだに慣れません。
や、やっぱり修道女としては、はしたないとも思ってしまいますし。
けれどもう、拒む理由もないのです――。
外へ見送りに出ると、彼は馬にまたがりました。これからアレス様たち勇者ご一行の皆さんと、色々な相談をしにいくそうです。
と言っても最近ではもっぱら騎士とヒューイ様――罠解除師で裁縫師でもある彼との口論で時間が過ぎてしまうとのこと。
「……ヴァイス様。あまりヒューイ様を困らせないであげてくださいね。わたくしは、平気ですから」
「あなたがよくても俺がよくない。何が何でも式を挙げてから出立する」
わたくしは頬が熱くなるのを感じました。そう――騎士はわたくしとの結婚の儀を終えてから魔王討伐に出たいと、そう主張しているようなのです。
と言っても、本格的な式となると準備に数ヶ月かかります。さすがにそこまで待つわけにはいきませんから、せめて仮の儀式のようなものを行いたいと――そう騎士は言うのですが。
そのときのための騎士の礼服とわたくしのドレスを、騎士は以前の宣言通り、ヒューイ様にお願いしたのだそうです。