託宣が下りました。
第三話 そんなつもりはありません。
 騎士が現れるたび追い返し、騎士の妹が現れるたびなだめたりおだてたりして家に帰すことを繰り返しながら、数日経ったある日。

 朝一でシェーラが、見たことのない女の子を連れてきました。

「新人よ、アルテナ。教育してくれってアンナ様が」
「わたくしが?」
「あなたと、私の二人で」

 わたくしは喜びました。新人の教育は初めてです。わたくしの修道も人に教えられるほど、少しはさまになってきたのでしょうか。

 名前はレイリアさん。年齢は十八歳で、わたくしたちより年下です。王都の出身だということで、シェーラと話が合いそう。そこはシェーラに譲るとして。

「星の巫女志望?」
「はい」

 レイリアさんは大人しそうな顔でうなずきました。
 シェーラが虚空を見て、言葉を探します。

「ええと……じゃあまず、もう知ってると思うけど星の巫女になるまでの道のりを復習しようか」


 修道院には星の声を聞く『巫女』と、巫女見習いがいます。

 厳密に言えば、星の巫女を目指していないふつうの修道女もいるのですが、この国では一般的に『修道女』=『星の巫女見習い』です。

 見習いは行儀作法、勉強と、いくつかの技術を習います。星の巫女になれる者は一握り、そのためなれなかった者は修道院を出る可能性があり、そのときに困らないよう、手に職をつけようという試みです。ちなみにわたくしは簿記と造花作りを習っています。

 星の巫女見習いは毎夜、祈りの間に集まります。そして、星の声に耳を傾けます。それを『御声(みこえ)拝受』と言います。

 このとき、何人かは実際に声が聞こえるのです。

 わたくしも何回もお声を賜りました。それは託宣と言うよりは、空の機嫌がいい悪いなどの、ささやかなお声であることが大半です。

 ごくまれにこのときに重要なお言葉を聞く巫女もいます。例えば五年前の勇者の登場は、この御声拝受の際に一人の見習いが告げたそうです。

 要は、星と同調する能力がここで試されるのです。
 御声拝受によって、同調力が高いと証明された者だけ、三ヶ月に一度の星祭りの日に祭壇にのぼることになる――。

 わたくしたちはそのとき初めて、一人前の星の巫女と認められます。
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