託宣が下りました。
「カイ様、王都に戻っていらしたんですね。また魔物討伐に出られたと聞いていたのですが」
シェーラは王都の近郊に勇者様が向かったと言っていました。「無事に帰ってきてくださって、嬉しいです」
「ははははい。ちゃんと倒してきました……」
「手強かったですか?」
「ててて手強かったです。でも、今回はヴァイスがいてくれたので」
「え?」
わたくしは驚きました。
「騎士ヴァイスも一緒だったのですか? 最近は魔物討伐には参加していないのでは」
「今回は久しぶりに参加してました……。お、お姉さんに手土産だ! と」
「手土産……?」
「ああああのう、今回の魔物は宝石を食らう魔物で、腹の中にたくさん宝石がありまして……」
それをお姉さんに、と告げる声がとても申し訳なさそうです。カイ様の責任ではありませんのに。
「……魔物のお腹の中……」
わたくしはひくりと引きつりました。
宝石は嫌いではありませんが、修道女ですのでもらうことはできません。それ以前に魔物が食らった宝石を喜んで受け取る自信がちょっとありません。宝石の価値自体は、変わらないにしても。
騎士が来襲したら気をつけよう。胸に固く誓いながら、わたくしはふと顔を上げました。
「カイ様、今日はどんな御用が? 顔を見せてくださったのですか?」
「ああああいえ、違うんです」
とても高い位置まで登っていたカイ様は、ローブをもろともせずするすると下りてきます。運動神経はとても良いのですね、さすが勇者様のお仲間です。
「……あ、あの。お姉さんに、気をつけてほしいと思って……」
「騎士ヴァイスのことですか?」
わたくしが即その名を出すと、「違うんです違うんです」とカイ様は、上でふるふる首を振りました。
「お、お姉さんが下した、託宣のことで……」
わたくしは口をつぐみました。朝に新人のレイリアさんに、それについて突っ込まれたばかりです。
考えると胸がちくちく痛みます。
「……わたくしの託宣が、どうかしましたか?」
「あの、ですね」
カイ様は迷うような態度を取りました。
木の幹にしがみついたまま、視線をわたくしからそらしてしばらく口を閉じます。
それから、意を決したように、わたくしに顔を向けました。
「あの託宣は無効です。王宮でそのように判断が下りました。それで、まもなく王宮から取り調べの者がお姉さんのところに来ると思います。どうか、気をつけて」
シェーラは王都の近郊に勇者様が向かったと言っていました。「無事に帰ってきてくださって、嬉しいです」
「ははははい。ちゃんと倒してきました……」
「手強かったですか?」
「ててて手強かったです。でも、今回はヴァイスがいてくれたので」
「え?」
わたくしは驚きました。
「騎士ヴァイスも一緒だったのですか? 最近は魔物討伐には参加していないのでは」
「今回は久しぶりに参加してました……。お、お姉さんに手土産だ! と」
「手土産……?」
「ああああのう、今回の魔物は宝石を食らう魔物で、腹の中にたくさん宝石がありまして……」
それをお姉さんに、と告げる声がとても申し訳なさそうです。カイ様の責任ではありませんのに。
「……魔物のお腹の中……」
わたくしはひくりと引きつりました。
宝石は嫌いではありませんが、修道女ですのでもらうことはできません。それ以前に魔物が食らった宝石を喜んで受け取る自信がちょっとありません。宝石の価値自体は、変わらないにしても。
騎士が来襲したら気をつけよう。胸に固く誓いながら、わたくしはふと顔を上げました。
「カイ様、今日はどんな御用が? 顔を見せてくださったのですか?」
「ああああいえ、違うんです」
とても高い位置まで登っていたカイ様は、ローブをもろともせずするすると下りてきます。運動神経はとても良いのですね、さすが勇者様のお仲間です。
「……あ、あの。お姉さんに、気をつけてほしいと思って……」
「騎士ヴァイスのことですか?」
わたくしが即その名を出すと、「違うんです違うんです」とカイ様は、上でふるふる首を振りました。
「お、お姉さんが下した、託宣のことで……」
わたくしは口をつぐみました。朝に新人のレイリアさんに、それについて突っ込まれたばかりです。
考えると胸がちくちく痛みます。
「……わたくしの託宣が、どうかしましたか?」
「あの、ですね」
カイ様は迷うような態度を取りました。
木の幹にしがみついたまま、視線をわたくしからそらしてしばらく口を閉じます。
それから、意を決したように、わたくしに顔を向けました。
「あの託宣は無効です。王宮でそのように判断が下りました。それで、まもなく王宮から取り調べの者がお姉さんのところに来ると思います。どうか、気をつけて」