託宣が下りました。

 魔物憑きとなったヴァイスには治癒魔法が効かない。彼の回復は、彼自身の体力に任せるしかない。

 ヨーハンが約束通り、魔物をヴァイスの体に封じておくための処置を行った。まじないのためのタリスマンをヴァイスの首にかけ、調合した薬を意識のない彼の口にそっと含ませる。

「これからどうしたらいいんだヨーハン。まさかヴァイスに、気力で魔物を倒せというのか?」

 アレスが苛立った声で友人に声をかける。
 ヨーハンは首を振った。

「あとは……アルテナ様次第です」
「アルテナが?」
「アルテナ様に、ある試練を受けていただかなくては」
「―――」

 これ以上アルテナに無理難題を言うのかと、責めることはとうていできなかった。あのへらへらしたヨーハンが、沈痛な、真剣な顔でそう言うのだから。

 部屋に沈黙が落ちた。ときどき聞こえるヴァイスのうめき声だけが、音だった。しんとした空間だった。

 やがて、

「アルテナ様がお目覚めになりました!」

 アルテナの部屋からカイが報告に来る。

 アレスはヨーハンを見る。ヨーハンは、決然とした目でうなずいた。

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