託宣が下りました。
わたくしは必死で首を振りました。
騎士の部屋は同じ二階。これだけ近くにいるのに――
彼が苦しんでいるのに、様子をたしかめることができないなんて。
*
魔物に取り憑かれたわたくしが考えたことは、何とかして自力で魔物を倒すことでした。
と言っても、どうすればいいのか分かりませんでした。必死で魔物の嫌いなものを考えたとき、クラリス様の治癒術をわたくしの体が拒んだことを思い出したのです。
ということは、魔物は聖なる力を嫌うはず。あの、光のような力をあれほど嫌ったのですから。
だとしたら、聖なる力が溜まっている場所に行けば――
そのとき思い出したのは、先日アンナ様とともに見に行ったばかりの禊ぎの間でした。
あの場所の水は聖なる水です。たしか討伐者たちに、聖水として魔物退治に使われているのと同じ水のはずです。
そうだ、あの禊ぎの間に浸かれば。
魔物を退治できるかもしれない。
自分の命を賭けた戦いだと、分かっていました。魔物はわたくしとどんどん同化していく。わたくしの意識は今にも消されそうで。
それでも、血が出るほどに唇を噛み締めて己を保ちました。