託宣が下りました。

「ひとつだけ、先に言っておきますが」

 アレス様はわたくしを優しくサポートしながら、ためらいがちに言いました。

「ヴァイスの部屋にはヨーハンがいます」
「……!」

 わたくしのぎくりとした反応に、アレス様が悲しげな顔をしました。

「……覚えておいでですか。ヨーハンのしたことを」
「………」

 わたくしは黙って下を向きました。

 魔物がわたくしの中からいなくなったことで、記憶はすべて鮮明に戻ってきていました。あの人気のない小さな公園に、わざわざ行った理由。

 あの公園で、行われたこと。

「……ヨーハン様に魔物が取り憑いていた。ヨーハン様は、それをわたくしにうつしたのですね」

 わたくしは顔を上げ、アレス様とカイ様を順繰りに見ました。

「それは魔物のさせたこと。ヨーハン様に罪はありません」
「………」

 しかし二人は気まずそうに視線を見交わしました。

「……?」

 わたくしが疑問符を浮かべると、「それについては」とアレス様がなだめるようにわたくしの肩を抱き、

「ヨーハンに、直接聞くのがいいかと……私たちに言えることはありません」

 いったいどういう意味でしょう? そのときのわたくしにはよく分かりませんでした。

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