託宣が下りました。

 おそらく魔物の憑依は、魔物に完全に身を任せてしまったほうが楽なのです。シェーラのお父様の容態が、さほど深刻ではなかったように。

 ですがわたくしは抗いました。それは体の中で嵐が起こるようなものでした。体内で動き回り、宿主にも構わず牙をつきたてる魔物に、消されてしまわないよう必死に意思を保ちながら、わたくしは禊ぎの間まで行ったのです。

 おまけに聖なる水に入ったために、地獄の炎に焼かれるような思いをしました。

 騎士の中でも今、魔物は同じように荒れ狂い暴れているのでしょうか。
 それとも、騎士の力に圧倒されて、少しは大人しくなっているのでしょうか?

「……いくらヴァイス様が超人でも、過去に宿主の力だけで魔物を消滅できたことはありません」

 わたくしはようやく、ヨーハン様をまともに振り返りました。

 胸がずきずきとしました。けれど、魔物学者の彼の言葉を聞かなくては。

 ヨーハン様は、わたくしに向かって、深々と頭を下げました。

「……すべて、僕のせいです。本当に申し訳ありませんでした」
「そんな。魔物に憑かれたのはヨーハン様のせいでは――」
「取り憑かれたのは僕の力不足。そしてそれをあなたに取り憑かせたのは――僕の欲求です。言い逃れはできません。すみませんでした」

 彼の欲求――?

 信じられない思いでヨーハン様を見ました。

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