託宣が下りました。
顔を伏せて考え込んだ様子の伯爵は、やがて顔を上げ、シェーラを見ました。
「シェーラ、すまなかったな。どうやらお前をひどい目に遭わせてしまったらしい」
「お父様、そんなこと」
無事で良かった。そう言ってシェーラはお父上に抱きつきました。
シェーラの頬に、涙が伝っていました。
シェーラはお父上が大好きなのでしょう。だからこそ――
修道院にいた期間、わたくしに自分の環境について――何よりお父様について――決して愚痴を言うことはなかったのです。
わたくしもこぼれかけた涙を拭いました。
伯爵が魔物に操られていた。それがシェーラの結婚話にどこまで影響しているのか分かりませんが、少なくとも伯爵がご無事なのは良かった――。
「……終わりましたか」
ふと、新しい声が割り込みました。
「……?」
わたくしは振り返りました。いつの間にか、騎士の陰に誰かがいます。
騎士がその誰かに、珍しく困ったような声で言いました。
「よく平気で俺の前に顔を見せられたな、レイリア」
「そりゃあ。私は雇い主の命令通りに動いているだけで、悪いことは何もしていませんので」
「レイリアさん……!?」
わたくしは仰天しました。そこにいたのは間違いなく、修道院に新人として入ってきたあのレイリアさんだったのです。
シェーラがはっとレイリアさんを見ます。そして、声を張り上げます。
「ちょっとレイリアあんたね、人を眠らせてさらっておいてよくものうのうと……!」
「旦那様のご命令でしたので」
レイリアさんはこたえた様子がありません。本当に図太い――ええ遠慮なく言います、図太い人です。
わたくしは説明を求めて騎士を見ました。
騎士は肩をすくめました。
「こいつは昔から金で動く情報屋として有名なんだ。ブルックリン伯はシェーラ殿をさらうために雇い、俺はこの別荘の内情を知るために雇った。まあついでに出先の伯爵に俺たちが忍び込んだことまで報せたのは余計だったと思うんだが」
「旦那様のご命令でしたから」
つまり、お金をもらいましたから――。
わたくしはめいっぱい脱力しました。何だかもう、今夜は疲れた……。
「どうした巫女? 疲れたなら今夜こそ一緒に寝るか?」
それだけは全力でお断りします。
「シェーラ、すまなかったな。どうやらお前をひどい目に遭わせてしまったらしい」
「お父様、そんなこと」
無事で良かった。そう言ってシェーラはお父上に抱きつきました。
シェーラの頬に、涙が伝っていました。
シェーラはお父上が大好きなのでしょう。だからこそ――
修道院にいた期間、わたくしに自分の環境について――何よりお父様について――決して愚痴を言うことはなかったのです。
わたくしもこぼれかけた涙を拭いました。
伯爵が魔物に操られていた。それがシェーラの結婚話にどこまで影響しているのか分かりませんが、少なくとも伯爵がご無事なのは良かった――。
「……終わりましたか」
ふと、新しい声が割り込みました。
「……?」
わたくしは振り返りました。いつの間にか、騎士の陰に誰かがいます。
騎士がその誰かに、珍しく困ったような声で言いました。
「よく平気で俺の前に顔を見せられたな、レイリア」
「そりゃあ。私は雇い主の命令通りに動いているだけで、悪いことは何もしていませんので」
「レイリアさん……!?」
わたくしは仰天しました。そこにいたのは間違いなく、修道院に新人として入ってきたあのレイリアさんだったのです。
シェーラがはっとレイリアさんを見ます。そして、声を張り上げます。
「ちょっとレイリアあんたね、人を眠らせてさらっておいてよくものうのうと……!」
「旦那様のご命令でしたので」
レイリアさんはこたえた様子がありません。本当に図太い――ええ遠慮なく言います、図太い人です。
わたくしは説明を求めて騎士を見ました。
騎士は肩をすくめました。
「こいつは昔から金で動く情報屋として有名なんだ。ブルックリン伯はシェーラ殿をさらうために雇い、俺はこの別荘の内情を知るために雇った。まあついでに出先の伯爵に俺たちが忍び込んだことまで報せたのは余計だったと思うんだが」
「旦那様のご命令でしたから」
つまり、お金をもらいましたから――。
わたくしはめいっぱい脱力しました。何だかもう、今夜は疲れた……。
「どうした巫女? 疲れたなら今夜こそ一緒に寝るか?」
それだけは全力でお断りします。