託宣が下りました。
 シェーラが震えながら泣いています。きっと彼女は、もう諦めかかっていたのでしょう。それが少しでも変わったことが嬉しくてたまらないに違いありません。だってわたくしでさえ嬉しいのですから。

「伯。それは僕にも待てということですか」

 マクシミリアン様がふてくされた顔でブルックリン伯爵を見やります。

 伯爵はため息をついて騎士を見ると、「彼の説得に手を貸してくれないかね」と言いました。

「説得か。マックス、あと一年待てばいいことがあるぞ。おそらくのびのびと生活したシェーラ殿はますますきれいになる! 今でもそうだろう? 修道院にいた間にきれいになったんじゃないか?」

 騎士がとんでもないことを言うと、マクシミリアン様は顔を輝かせました。

「たしかに! シェーラ、僕は君が僕にふさわしい女性になっていくのが嬉しいよ!」
「誰があんたにふさわしくなんかなりますか!」

 シェーラの叫びはもっともとしか言いようがありませんが――


 あと一年。制限はかけられてしまったけれど。

 その一年の間にも、伯爵やマクシミリアン様とたくさん話すことをシェーラに勧めようと思います。そうしたらその一年の間にも、もっとよい変化が現れるかもしれません。この、少しだけ悔しい思いを晴らすような何かが。

 いつかシェーラがお嫁に行ってしまうなら、会うことも難しくなるでしょう。

 それでもシェーラの覚悟が定まってそうなるならば、わたくしは心から祝福できる。

 何より修道院での残り一年が満足のいくものとなるよう……わたくしはシェーラのために、我が親友のために、何でもしようと心に決めました。



 シェーラが無事に修道院へと戻り……
 アンナ様や他のお姉様方に祝福され、その夜、シェーラの無事を祝う祈りが行われました。

 そして翌日から普段どおりの一日が始まり――。

「って、どうしてあんたがここにいるのよ!?」

 朝の食堂でシェーラが悲鳴を上げました。

「シェーラお嬢様。言葉が汚いです」

 そんなことをしれっと言ったのはレイリアさん。

 いつもの通りシェーラと二人で食堂のテーブルにつき、楽しく食事を始めようとしたら、いつの間にか彼女も一緒にいたのです。前々から思っていたのですが、この子は神出鬼没なのでしょうか。
< 77 / 485 >

この作品をシェア

pagetop