かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
時刻は二十時三十分。気づけばフロアには、私ひとりしか残っていない。
デスクの引き出しから栄養補助食品を取り出し、それを口にくわえる。あまり行儀のいいことではないが、今は食事をゆっくりとっている暇はない。
そのままパソコンとにらめっこをしていたら、フロアのドアが開く音がして振り向く。目の先に遊佐部長の姿が見えて、くわえていた栄養補助食品を慌てて口の中に押し込んだ。
「うっ……ゴホッゴホッ!」
驚きのあまり無理やり押し込んでしまい、柔らかいが水分の少ない固形物が喉に詰まる。
「野中! 大丈夫か? 早くなにか飲め!」
遊佐部長にそう言われ、デスクの上にあるペットボトルのお茶を手に取る。それを勢いよく飲むと、詰まっていた固形物が徐々に喉の奥へと流れだした。
「なにをやってるんだ」
遊佐部長が私の背中をさすっている。申し訳ないやら恥ずかしいやら、穴があったら入りたいと肩をすぼめた。
「お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありません」
「謝る必要はない。こっちこそ驚かせて悪かった。もう大丈夫か?」
「はい。お騒がせしてすみません」
ふぅと息をつくと、遊佐部長が隣で笑い出す。何かおかしなことでも言ったかなと顔を上げた。