かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「……づき……葉月?」
私の身体を優しく揺れ動かしながら、名前を囁く声に目を開けた。ぼんやりとする瞳から見えるのは、杏奈の心配そうな顔。
「どう、少しは気分良くなった? 和田副部長が、今日はもう帰れって。ちゃんと体調整えてから出勤してこいって伝言」
「和田副部長? 遊佐部長じゃなくて?」
自分でもよくわからないまま、彼の名前が口からついて出る。どうしてその名前が出てきたのか、彼に合ったような気がするけれど、どうにも思い出せない。
「葉月。どうして遊佐部長がこっちにいるって知ってるの?」
「え?」
瑞希さんが本社にいるの? そんなこと、私は知らない。でもさっき……。
「んっ……」
瑞希さんのことを思い出した瞬間、ズキンと頭が痛む。その痛みに顔をしかめると、杏奈が慌てたように私に近づいた。
「ごめん。まだ調子悪いよね」
「ううん、大丈夫。瑞希さんの名前が出て、ちょっと動揺しただけだから」
ふと夢の中で瑞希さんに触れられた頬に、自分の手を当ててみる。あれはもしかすると、夢ではなかった?