かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「まさかね」
瑞希さんが私のところに来るなんて、そんなことあるわけない。私のほうから連絡を絶ったんだから、きっと怒っているに違いない。しかも頬に触れるなんて……。
瑞希さんに会いたいと思う気持ちが、都合のいい考えへと勝手に導くらしい。自己中にもほどがあるというものだ。
それにしても、この身体の気だるさは一体……。
「あ……」
「葉月、どうかした?」
杏奈の顔をじっと見つめたまま、動けなくなってしまう。不意に頭の中をよぎったかすかな不安、それは……。
「杏奈。私もしかしたら、妊娠してるかもしれない」
仕事に没頭しすぎて忘れていたけれど、一日だって周期が乱れたことのない生理がもう三ヶ月来ていないのだ。
「はぁ!? それってどういうこと? まさか遊佐部長……」
そうだと言わんばかりに、コクリと頷いてみせた。そうだとすれば、この身体の不調も合点がいく。いや、納得している場合じゃないのはわかっている。けれど今はそうするしか、身の置き所がないのだ。
「まだ決まったわけじゃないけど、可能性は高いかも」
「かも……って葉月。どちらにしても、早く病院行ったほうがいいんじゃない? なんなら今からでも。あ、遊佐部長はどうする? タイミングがいいのか悪いのかわからないけど、ちょうどこっちに戻ってきてるし。それに……」
杏奈の表情が、にわかに変わる。それにって、なにかあるのだろうか。