かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「今日葉月が倒れたこと、遊佐部長にも知ってると思うんだよね?」
「え、なんでそんなこと」
「まだ人事部が葉月のことでざわざわしてるときに、遊佐部長が戻ってきてね。たぶん、聞こえてたと思うんだ」
「そ、そうなんだ……」
じゃあやっぱり、さっきここにいたのは瑞希さんだったのかも。そう思うと嬉しいような苦しいような、複雑にもつれ合った感情に心が揺れた。
「ねえ葉月。やっぱりもう一度きちんと、遊佐部長と話したほうがいいんじゃない? その……妊娠のこともあるんだし」
「うん、そうだよね。わかった。杏奈の言う通りにしてみるよ。心配かけて、ごめんね」
このまま何もなかったことにしようと思っていてけれど、杏奈の言う通り、ちゃんと向かい合って話したほうがいいのかもしれない。妊娠のことはまだわからないけれど、後回しにもできない。
「このまま病院に行ってくる。あ、でも、瑞希さんに会っても、まだなにも言わないでほしい」
「そうだね。自分の口で話したほうがいいと、私も思う」
杏奈にそんな言葉に背中を押されて、でも不安な気持ちも消せないまま、ひとり病院へと向かった。