かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
超が付くほどの人気がある彼のことだから、香野さんをはじめ秘書課の面々、社内の女性陣から山ほどのプレゼントをもらうに違いない。私が渡したところで埋もれてしまうだけ。それに瑞希さんは誕生日当日もきっと名古屋にいて、忙しくしているだろう。
なにを考えても堂々巡り。このままではダメだとわかっていても、またいつもと同じでふりだしに戻ってしまうのだ。
結局なにも決められず、悶々としたままフロアに戻る。するとデスクの上に見慣れない封筒があって、訝しげにそれを手に取った。中を見ると、手紙らしき便箋が入っている。
誰が置いていったのかと周りを見回すが、みんな仕事をしていてそれらしき人は見当たらない。間違いとも思ったけれど、それも中を見ないことにはわからないと封筒の中から便箋を取り出した。
勝手に見て、ごめんなさい──。
と思いながら便箋を開く。綺麗な字体が目に飛び込んできたのも束の間。書き初めに“葉月へ”書いてあるのに気づき、便箋を持つ手が震えだす。
それだけではない。照っているのも不安なほど足も震え、腰から砕けるように椅子に座り込んだ。