かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
 
 三時間後。
 
 杏奈が調べてくれた、瑞希さんが滞在しているホテルの前に到着。やっとの思いでここまで来たというのに、瑞希さんが近くにいると思うと急に怖気づき決心が鈍りだす。
 
 スマホを見ると、時刻は二十時半を少し過ぎたところ。
 
 本社にいるときの瑞希さんならば、まだこの時間だと仕事をしていることが多い。名古屋ではどんな時間帯で仕事をしているのかわからないけれど、たぶんまだ部屋には戻ってきていないだろうと踏む。
 
 七月半ばの名古屋の気温は高く蒸し暑い。出来れば涼しいところで待っていたいところ。けれど時間が時間だけにホテルのロビーで待っているのもどうかと、辺りを見回す。すると幸いにもホテルの前には公園があって、出入り口がよく見える場所で待つことにした。
 
 早く会いたい──。
 
 心の中でそう願っていると、その気持ちが通じたのか意外にも早く、タクシーの中から瑞希さんが姿を現す。
 
 まだ仕事がうまく進んでいないのか、表情が優れない瑞希さんに恐る恐る近づいた。


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