かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「……葉月?」
私の存在に気づいた瑞希さんは、まるで幽霊にでもあったような顔をしている。そのくらい驚いているのだろう。
「どうして葉月が名古屋にいるんだ? 俺は夢でも見ているんだろうか……」
そう言いながら一歩近づいた瑞希さんは、私に右手を差し伸べた。その手を掴もうと、私も右手を上げた瞬間。
ふっと目の前が真っ白になって、そのまま意識を手放した。
「葉月。目が覚めたのか?」
瑞希さんの声に、ゆっくりと目を開ける。瞼が重たい。
それでもしばらくすると視野がはっきりとしてきて、瑞希さんの心配そうな顔が見えた。
「……瑞希さん」
でもその顔はすぐに、怒りともとれる表情に変わる。
なにか瑞希さんを怒らせるようなことでもしただろうか? 部屋の中を見ると病室らしき設備があって、ここは病院なのだと気づいた。
「葉月、大丈夫か? 倒れたとき俺がいたからよかったものの、そうじゃなかったらどうなっていたことか」
「あぁ……すみません」
だから怒っているのだと、しゅんと気落ちしてしまう。