かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
 
 瑞希さんに手を差し伸べられて、その手に自分の手を上げたところまでは覚えているけれど、それ以降の記憶が全くない。
 
 そっかぁ、私気を失ったんだ。やっぱり今回も、妊娠のせいなんだろうか。
 
 まだ気分は完全に戻っていない。それでもこの流れで妊娠していることが知られるのは嫌で、ベッドから起き上がり元気に見せかけるように笑って見せた。

「葉月。どうして名古屋に来たんだ?」
「どうしてって、それは……」

 瑞希さんの冷たい物言いに、その後の言葉が続かない。来てはいけなかったのかと、さすがに落ち込んでしまう。

「ごめんなさい。すぐに帰ります」
 
 まだ少しふらっとするけれど、瑞希さんを怒らせては元も子もない。今日のところはいったん帰ろうと立ち上がった拍子に、その身体を瑞希さんにふわりと抱きしめられた。

「そういうことを言ってるんじゃない。葉月、なにか俺に隠してることはないか?」
 
 耳元で囁かれ、ドキッと心臓が跳ねる。触れる手が、いつにも増して優しい。


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