かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

 私が瑞希さんに隠していること? そんなことあるはず……。

「あ……」
 
 突としてあることを思い出し、お腹に手を当てる。今いるのが病院だったと諦めて、ため息をつきながら彼の腕の中で項垂れた。
 
 きっと瑞希さんは、私のお腹の中に新しい命が授かっていることを知っている。だから隠してることはないかなんて聞いてきたのだ。
 
 でもどうしてそんなことを聞くのか。妊娠していることを伝えたときの瑞希さんの反応が怖くて、どうしても口を開くことができない。
 
 ひとりで産んで育てると決めたのに、ここに来て瑞希さんに父親になってほしいと欲が出てしまった。

「言わないつもり? それとも、葉月のお腹で育っている命は俺の子じゃない?」
「そんなわけないじゃないですか! 瑞希さん、ひどい」
 
 まさか疑われているなんて……。

 信じられない唐突な言葉に、離れようと彼の胸を強く押す。でも私の力なんてなんの役にも立たず、瑞希さんはさっきまでよりも強く抱きしめた。


< 116 / 139 >

この作品をシェア

pagetop