かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「葉月がなかなか言い出さないからカマをかけたつもりだったが、イジワルなことを言った。ごめん」
「じゃあ……」
「わかってる。葉月の顔にちゃんと書いてあるからな、お腹の子は俺の子だって」
「えっ……」
少し考えればそんなこと嘘だとわかるのに、ツンと頬を突かれて隠しても無駄だとわかっていて顔を隠した。案の定、添えられた指で顎を掬われて、至近距離で見つめ合う。彼の漆黒の目が、私の心も身体も捕らえて離さない。
「体調がよくないのに名古屋まで俺に会いに来てくれたのは、手紙の返事をもってきてくれたってことでいいのか?」
そう言って私の目を覗き込む瑞希さんのその瞳は、期待に満ち満ちている。
瑞希さんに直接、自分の気持ちを伝えたい──。
そう思って名古屋まで来たのだ。でもいざ瑞希さんを目の前にすると、やっぱり決意が鈍る。いや、鈍るというより怖いと言ったほうがいいかもしれない。
香野さんに言われたことを鵜呑みにして勝手に瑞希さんから離れておきながら、のこのこと名古屋まできてしまった。妊娠したからよりを戻したいと、都合のいい女だと思われやしないだろうかと。