かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
 
 はあと大きなため息をつくとパソコンに向き直り、入力の続きをしようとキーボードに手を乗せた。でも遊佐部長のことが気になって、思うように指が動いてくれない。

「野中。出来ているところまででいいから、こっちに送ってくれないか? ざっと確認する」
「わ、わかりました」
 
 ボーっとしている暇はない。遊佐部長に急いでデータを送り、彼のほうを見た。送ったデータが届いたのか、遊佐部長がコクリと頷いた。

「野中。ちょっといいか?」
「はい」
 
 遊佐部長はパソコンに目を向けたまま、こちらを見ずに私を呼ぶ。すぐに立ち上がって彼のところへ向かった。

「そこの椅子を持ってきて、隣に座って」
「は、はい」
 
 慌てて椅子を持ってくると、遊佐部長の隣に座り身体を近づけた。彼から少しの甘さを含んだ、柑橘系の香りがする。

「ほとんどの資料が出来てるじゃないか。無理はしなくていいと言ったのに……」
 
 ゆっくりと振り向いた遊佐部長の視線と絡まると、腕がすっと伸びてきて私の頬に軽く触れた。お互いになにも話さないまま、ただ時間だけが過ぎる。


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