かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
 
 今日の遊佐部長は、なにかがおかしい。
 
 いつも柔らかい目をしているけれど、今日は一段と柔らかさを増している。そんな目を向けられたら、遊佐部長は私のことをどう思っているのかと、弥が上にも期待してしまうというもの。

「遊佐部長、こんなこと……。どうしたって言うんですか?」
「さあ、どうしたんだろうな」
「からかわないでください。遊佐部長には美人な婚約者がいるんじゃないんですか? それともスーパーモデルの彼女ですか? 見た人がいるんです、同じ日に違う女性と歩いていたって──」
「そんなに俺のことが気になる?」
 
 私のおしゃべりな口を、遊佐部長の人差し指が塞ぐ。身体が痺れたように身動きがとれない。

「そうだな。全部が嘘だとは言えないが、スーパーモデルの彼女なんていない。美人な婚約者なんてもってのほかだ。俺もいい歳だからな、両親が早く結婚しろと見合いの話が持ち上がって、それにいつの間にか尾ひれがついて婚約者がいると噂になったみたいだ」


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